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九州大学芸術工学部との共同研究。行為分析から認知機能の向上、そして高齢者のレジリエンスを探る。

なぜエビデンスか?

「脳若トレーニング」を事業としてやれないかと模索し始めたころ、イギリスBCCがスポンサーになって行われた大規模な研究がニュースで流れました。「英国脳機能テスト」と呼ばれるそうですが、結果、「脳トレは役に立たない」という記事が世界中に出回りました。脳トレやゲームのイメージが安っぽくなったきっかけだったのではないでしょうか。ところが、この研究はすぐに研究方法と解釈に不十分な点が多々あり、かなり批判されたらしいのですが、それがニュースになることはなかったという事を最近知りました。

当時私は、パソコン教室に集まってくるシニアさんを見て、パソコンはあくまでツールであり、必要なのは人との繋がり、コミュニケーションだと強く感じていました。だから介護予防を切り口にiPadをツールにし、コミュニケーション重視の講座を作ろうと考えた事は、本当に自然な流れでした。

あの研究が、発表された時はやっぱりゲームだけ黙々とやるのは意味がないよねと思ったものです。アプリを作るのでなく集合で出来る教材を作り、「コミュニケーション」を『脳若』の特徴としてアピールしてきましたが、やはり「脳トレ」のイメージはぬぐえないものでした。だから介護施設でもレクリエーションとしてしか見てもらえなかった。高齢者の方が喜んでいただければそれでいいじゃないか、エビデンスなんかいらない、と割り切っていた時期も確かにありましたね。

最近の研究ではfMRI等に代表される脳の神経画像処理技術の急速な発達で、様々な事が明らかになっているようです。脳の機能を良くする事は何歳になってからでも遅くないとされ、運動だけではなく脳のトレーニングの効果、脳を鍛える事の重要性を明確に証明しようとする研究が世界中で進んでいます。

私自身、脳の事はまだまだ未開でエビデンスって無理があるよね、という考えを持っていましたので、これからはもっと前向きに「科学的な根拠」についてアンテナをはる必要があると思っています。

『脳若』の科学的根拠は?

DBJ(日本政策投資銀行)の女性ビジネスコンペで残った時、最後の審査員からの総評に「エビデンス」の必要性を指摘されました。また同時に、こんなに受講生の様子が変わり、喜んでもらえる事業をもっと広めたい、その為に研究発表を行うことには意義があるんだと自分で腹落ちしてからは早かったですね。忘れもしません、福岡県粕屋町の役場の駐車場に早朝から福祉課の担当者が出勤してくるのを待ち伏せ、エビデンスプロジェクトの協力を直談判したのでした。「研究費を国の補助金をあてに待っていたらいつまでたっても出来ないんです、自腹でやりますから協力してください!」そう言って始まったエビデンスプロジェクト。町内の65歳以上100名を対象に実証実験を実施(ホントは400名集まったのですがなにせ自腹ですから…泣く泣くお断りしました)。九州大学人間環境学府(当時)の北野祥子氏により、実験計画・評価の支援をお願いすることができました。そして学会発表まで、今思えばあっという間でしたね。

2014/10/26「第9回日本応用老年学会大会」
2015/9/26「第5回日本認知症予防学会学術集会」

人前で喋るのは慣れていますが、さすがに「アウェイ」(笑)ですから医者や研究者の前で発表するのは緊張しましたね。

神戸で行われた第5回認知症予防学会
2015/9/26「第5回日本認知症予防学会学術集会」
脳若トレーニング介入効果【即時再生】
脳若トレーニング介入効果【即時再生】
脳若トレーニング介入効果【遅延再生】
脳若トレーニング介入効果【遅延再生】

九州大学芸術工学部との共同研究で何を模索するのか?

今年から始まった大学との研究なのですがタイトルは「認知機能のレジリエンスに関する基礎的研究」。「レジリエンス」というのは心理学の言葉で、「復活力、回復力」のようなニュアンスの意味です。
手始めに、「脳若トレーニング」の様子をビデオに収録し行為分析を徹底的に行うことから始めました。丁寧に、アナログで見える形にしたものがこちら。

共同研究打ち合わせ(九州大学大橋キャンパスにて)
共同研究打ち合わせ(九州大学大橋キャンパスにて)

私は学者でないので詳しいところはわかりませんが、こんな順番で行われればいいなと思うんです。

  1. 仮説を立て、データを集めて、検証する
  2. アウトプットしてまとめる
  3. 形にしてサービス、商品として世に出す
  4. 多くの人がその恩恵にあずかる

この度の共同研究、私が担当する仕事は3ですね。

良い研究を行ったとしても、それがちゃんと世の中に出て、本当に役に立たなければ意味がありません。

正しい広告宣伝、教材への落とし込み、使いやすいアプリの開発、が私どもの役目となるでしょう。まだまだ道のりは長いですが、これぞ着実に前に進めるべき事として来年のメインテーマになるはずです。