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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2025年03月27日号 VOL.733
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「コンビニはもう飽和している」なんて言葉を、いつからか当たり前のように聞くようになった。
確かに街にはどこを歩いてもコンビニがある。でも最近、その風景の意味が少しずつ変わってきている。数を競う時代は終わり、今は“なぜそこにあるのか”が問われる時代に入ったのかもしれない。
和歌山の山間にある龍神村。
そこにあるローソンは、ただの商品を並べるだけの場所じゃない。小上がりのイートインには、子育て中のお母さんやシニアの方々が自然と集まり、会話が生まれている。コンビニが“居場所”になっているのだ。
私が関わっている自治体でも、こんな話がある。
買い物が難しくなった独居高齢者を、まだまだ元気なシニア層が支える仕組み。生活支援のマッチングだ。けれど、人と人を直接つなぐことは簡単ではない。性格やタイミング、距離感…すべてが絶妙なバランスの上に成り立つ。
そんな中で、地域の担当者との雑談の中にローソンの名前が出てきた。
「サポーターが商品を届けてくれるなら、ぜひ協力したい」と。
ローソンも、いまやターゲットは中高年層。人手不足の中、こうした支援の仕組みに可能性を感じているという。
ところで、コンビニの“商圏”というものがある。
半径354メートル。それがひとつの目安とされている。なぜかというと、徒歩で5分以内。つまり「日常の動線の中にあること」が前提だからだ。そこに2000人程度の人口がいれば採算がとれるとされてきた。だが最近では、もっと人口が少ない地域にも出店するようになっている。
理由はひとつ。
コンビニが“便利な店”から、“地域の機能そのもの”へと進化しはじめたからだ。
商品は本部だけでなく、地元の農協や業者からも仕入れる。野菜も肉も、鮮魚まで。ニーズに応じて、冷蔵だけでなく冷凍を活用する。そうすることで廃棄も抑えられるし、なにより持続可能になる。
私たちがつくろうとしている仕組みも、まさにそういうことかもしれない。
一方的な支援ではなく、地域の中で支え合い、商いの力も借りながら持続する。
それは新しいけれど、どこか懐かしいやり方でもある。
354メートル。たったそれだけの距離に、こんなにもたくさんの想いや機能が詰まっているなんて。
この小さな半径の中に、静かだけれど確かな革命が始まっているのだ。
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