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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2025年04月03日号 VOL.734
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人は、自分と似たものに安心をおぼえる生き物なのだと思います。
たとえば初対面の人でも、同じ町の出身だったとか、好きな音楽が一緒だったとか、何気ない共通点を見つけるだけで、少しだけ心の扉が開く。それは心理学で「類似性の親近効果」と呼ばれていて、似ている者どうしのあいだには、自然と親しみが生まれるという法則です。
この「似ている」という感覚は、決して派手なものではありません。
会話の中の何気ない一言や、ちょっとした仕草、あるいは間の取り方にふと感じられるものです。共通点があると、「この人は、きっとわかってくれる」と思える。逆に、どれだけ話術に長けていても、まったく自分と共通点を見出せない相手には、心が閉じたままになることもあります。
けれど、少し立ち止まって考えてみると、人生で本当に大きな影響をくれた人や、重要な情報をもたらしてくれた人というのは、必ずしも「似ている人」だったとは限らないことにも気づかされます。
むしろ、自分とはあまり接点のなかった人、たまたま立ち話をした相手、ほんの短い時間だけ同じ空間にいた誰か。そういった人から思いがけないヒントをもらった経験が、誰しもあるのではないでしょうか。
これが「弱い紐帯の強み」と呼ばれる現象です。
親しい人との強い関係よりも、知人や偶然出会った人との「弱いつながり」のほうが、新しい情報や価値を運んでくれることがある。まるで風のように、どこからかふっと舞い込んでくるような、そんな出会いです。
たとえば、出張先でタクシーの運転手さんと交わす短い会話から、その土地ならではの視点や、地元の人しか知らない名店の情報を得ることがあります。そんなとき、「話しかけてよかった」と素直に思います。もちろん、共通点などひとつもありません。でも、その弱い紐帯が、思いがけず私の世界を少し広げてくれるのです。
共通点から生まれる親近感と、違いの中からもたらされる新しさ。
この二つは、対立するものではありません。
私たちは安心と刺激、両方を求めながら生きている。だからこそ、似ているものには心を開き、似ていないものにも心を向けること。そのどちらも大切にしたいと思うのです。
そして、それを可能にするのが、「聞く力」だと思います。
似ていることを見つけるのも、違いの中に価値を見出すのも、相手の話に耳を傾けなければ始まりません。キャッチボールのように、受け取って、そして返す。そのやり取りの中で、私たちは少しずつ、世界を広げていくのだと思います。
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