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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2026年08月13日号 VOL.805
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本を借りに行くだけで介護が遠のくなら、こんなに楽な話はない。
そういう研究がある。
慶應義塾大学の研究者らが、六十五歳以上の七万三千人を七年間追いかけている。
住んでいる市町村の図書館の蔵書が、人口ひとりあたり一冊多いと、その地域の高齢者が要介護認定を受けるリスクが四パーセント低いのに相当するそうだ。
追跡した七年のあいだに、二割を超える人が認定を受けている。
その手前に、街にある本の数が効いているという。
ただし、研究者自身が、これは相関であって因果ではないと断っている。図書館に力を入れる自治体は、たぶんほかのことにも力を入れている。図書館を建てれば要介護が減る、という単純な話ではない。
それでも、なぜそうなるかの見立てが面白い。
本を選ぶことが頭の刺激になる。
人のいる場所へ出ることが社会参加になる。
そこまで歩くことが運動になる。
頭を使い、人と会い、体を動かす。私たちが介護予防の教室でつくろうとしているものと、そっくり同じだ。
こちらは会場を押さえ、案内を配り、送迎を考え、来てくださいと頭を下げて、やっとその三つを揃えている。図書館は黙って揃えている。しかも行く人は、健康のために行っているつもりがない。借りたい本があるから行くだけだ。
健康のためにと言われて続くものは、実は少ない。歩きなさい、頭を使いなさい、人と話しなさい。正しいのだが、正しさで人は動かない。用があるから出かけて、結果として体にいい。この順番のほうがずっと強い。
図書館については、もう一本読んだ論文がある。町や村が、自治体の一番上にある総合計画のなかで図書館に何を期待しているかを調べたものだ。
並んでいた言葉は、静けさより気軽さだった。
用がなくても入っていい、何をするでもなく座っていていい、そういう場所であってほしいと書かれている。もうひとつ、ボランティアの書かれ方が面白かった。趣味のサークルなら公民館でもいい。
計画にもそう書かれている。ところが子どもへの読み聞かせのように、その場を支える側にまわる活動になると、名前が出るのは図書館だけになる。借りに行っていた人が、いつのまにか運営する側に立っている。そういう建物として書かれている。
介護予防の教室を増やすことは私の仕事だ。だが、街の図書館に本を一冊増やすことも、たぶん同じくらい介護予防だ。そう考えると、自分の仕事の輪郭が少し広がる。
おわり。
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