2025/10/16 光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン【88歳の背中に学ぶ ― 続ける力という生き方】

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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2025年10月16日号 VOL.762
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先週の三連休、とある山岳クラブの皆さんと1600メートル級の山に登った。ゆっくりコースで3時間半。参加者のほとんどが70代以上で、88歳の方が二人おられた。軽やかな足取りで登っていく姿に、ただ驚くばかりだった。私はいま、60歳。あと28年後、自分はあの斜面を登れるだろうか。

登山は若い頃のようにスピードを競うものではなくなった。歩幅を小さく、息を合わせ、道の脇に咲く草花を眺めながら一歩一歩を刻む。途中で何度も声を掛け合い、秋の草花を楽しむ時間が、むしろ主役になる。山頂では風が心地よく、雲の切れ間から秋の陽射しが差し込んだ。88歳の先輩たちは笑顔で言った。「無理せんでいい。ゆっくり登ればええ。」

装備を見ると、ストックを上手に使い、リュックの中には必要最低限の荷物。体に合わせて工夫を重ねている。驚いたのは、皆さんスマートフォンで登山アプリ「YAMAP」を使っていたことだ。GPSで現在地を確認し、軌跡を記録し、家族にも位置を共有している。高齢でもデジタルを自然に取り入れ、安心と楽しさを両立させていた。安全と自立、そのバランスを自分なりに保っているように見えた。

頂上からの下り道、私は少し足が重くなり、膝に違和感を覚えた。彼らは冗談を言って笑いながら、着実に歩を進めている。自分が目指す老い方の姿を見た気がした。鍛えた筋肉だけではなく、長年の経験と節度が支えている。若さとは速さではなく、続ける力なのだと痛感した。

団塊の世代が75歳を迎える2025年。山岳クラブの主役はすでにシニア世代に移っている。全国に数千の山岳クラブがあり、週末の山には多くの高齢登山者が集う。彼らは自然を相手にしながら、自らの体と向き合い、人生のリズムを整えている。登山は健康づくりでもあり、仲間との社会参加の場でもあるのだ。
これからの高齢者ビジネスは、単なる“支援”ではなく、“継続のデザイン”が問われる時代に入ったと思う。安全に歩き続けるための靴、杖、アプリ、食、宿。どれも「無理せず楽しむ」発想の延長にある。

山を下りた夜、筋肉痛よりも心に残ったのは、88歳の背中。静かに、しかし確かに前を向いて登る姿。その余白のある強さに、人生の目標を見た気がする。
自分もあのように年を重ねたい。そう思えた一日だった。
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