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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2025年03月13日号 VOL.731
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先日、クレジットカード会社の顧客向け無料バスハイクに参加した。目的地は長崎の九十九島遊覧船。
今年から仕事の生産性向上とプライベート充実を目標としているので、無料だし、それなりの観光が楽しめるとあって申し込んでみたが、候補日がいつまでも決まらなくて予定が決まらず焦った。ハガキ案内だし、やはりこのスピード感なのかと。
参加者のほとんどは60代以上のシニア層。男性は2割程度で、そのほぼ全員が夫婦での参加。女性の一人参加は全体の約25%強といったところだった。年齢層が高いことから、リピーターも多いのだろう、お隣のやはり個人参加の同年代の女性はコロナ前はもっと頻繁だったのよと話していた。
帰り道には定番の「ジュエリー館」への立ち寄りが組み込まれていた。このシチュエーション、20年近く前に母が眼鏡屋さんのお客様向けバスハイクに申し込んだ時に同じ所へ行ったんだと思い出した。
これは、昭和の時代から続く”無料ツアー+販売会”という典型的なビジネスモデルなんだと思う。実際、ジュエリー館では何百回と繰り返されてきたであろう巧みなプレゼンテーションが行われ、販売会場へと誘導された。
~変わらない販売戦略と変わる消費者行動~
面白かったのは、参加者の反応だ。販売会場への移動後、半数以上の人が早々に退出し、バスの出発を待つ流れになった。結果、滞在時間は90分から短縮され、会場に残る人は限られた。しかしながら、3組ほどの夫婦が高価なネックレスを購入していたのが印象的だった。
このビジネスモデルが成立するためには、一定の購入者が必要だが、今回はわずか3組程度。それでも続いているということは、少数の購買層だけでビジネスが回っているということなのかもしれない。 販売金額は昭和のころからしたらかなりの減少だろうと想像できるのだが。
~昭和のビジネスモデルの限界~
この手法が成立してきた背景には、昭和の時代の購買心理が関係している。
「せっかく来たのだから何か買わなければ」という義理的消費
「高価なものほど価値がある」というモノ消費の価値観
「ツアー全体が楽しかったから、最後に何か買って貢献しよう」という心理的満足
しかし、自分をはじめ近年のシニア層は変化している。総務省の調査(2023年)によると、60代以上のスマホ普及率は約90%に達し、情報収集が容易になったことで、”その場の雰囲気に流される消費”が減っている。
さらに、内閣府の消費動向調査(2024年)では、シニア層の「体験消費」への移行が顕著であり、モノを買うより旅行や趣味にお金をかける傾向が強まっている。
すでに限界は見えているが、完全に消滅するわけではないだろう。特定の購買層(団塊の世代の一部や、昭和の価値観を強く持つ人たち)にはまだ通用するかもしれない。しかし、次世代のシニア層はより情報に敏感であり、”お得だから”や”記念だから”という理由だけでは購入しない。
昭和のビジネスモデルが完全に終わるわけではないが、そのままでは次第に淘汰される。今回のバスハイクは、その変化の過渡期を目の当たりにした体験だった。
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