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光岡眞里の「あゆみ」メールマガジン今日も元気にパワフルに!
作者:光岡眞里 2026年02月26日号 VOL.781
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仕事はある。
でも、自分のスキルや訓練を活かせていない職に就いている状態。これを「不完全雇用」とあらわす。2025年の調査で、アメリカの新卒大学生の50%超がこの「不完全雇用」に該当すると指摘された。
数字はもっとリアルだ。
ニューヨーク連銀のデータによれば、2025年第1四半期、アメリカの新卒大学生(22〜27歳)の失業率は5.8%。2013年以来最高水準だそうだ。しかも今回初めて、大卒者の失業率が全体の失業率(4.2%)を上回った。1980年以来のことだという。
さらに衝撃的なのが、コンピューターサイエンス専攻の失業率が6.1%に達したこと。かつて「最も安全なキャリア」と言われた分野の卒業生が、哲学専攻や人類学専攻と同等の就職難に直面している。これが今の現実だ。
なぜこうなったのか。
まずAIだ。Anthropic CEOのダリオ・アモデイは「AIが今後5年でエントリーレベルのホワイトカラー職の半数を消す可能性がある」と発言した。フォードのCEOも「ホワイトカラーの仕事が半減する」と予測している。2025年前半だけでアメリカでは70万件近い雇用削減が発表され、前年比80%増だ。
え、大学って何のために行くの?となる・・・
脚光を浴びているのがブルーカラーだ。ニュースでもよくやってる。
アメリカの若者の間で「トレードスクール(職業学校)世代」という言葉が生まれている。職業学校への入学者数は2022〜2023年で16%増。大学の伸び率(8%)の倍だ。
なぜか。シンプルな事実がある。
職業学校卒業生の失業率は2.1%。4年制大学卒業生の15.3%と比べると、圧倒的に低い。配管工、電気工、空調設備技師、整備士。年収1,000万円超えも珍しくないという。しかも、物理的な技術はAIに代替できない。
ただし、この話には根深い壁がある。親の7%しか「子どもに職業教育を選んでほしい」と思っていない。親の6割が「大学より職業学校は格下」という意識を持っている。数字が変わっても、意識はまだ追いついていない。
日本はどうか。
日本の若者の「公務員人気」は今もって鉄板だ。安定、安心、終身雇用。昭和の文法がまだ機能している。
でも待ってほしい。
円安で海外旅行すら「贅沢品」になった国で、世界基準の仕事に挑む逸材が育つ土壌があるのか。若者が国境の外を見なくなれば、比較軸を失う。比較軸を失えば、自分の限界も見えなくなるのではないだろうか。
日本の職業高校の研究(Ogawa 2025, Japanese Journal of Sociology)では、職業高校卒業生の労働市場プレミアムは安定して高く、むしろ近年その優位性が増している、というデータがある。大学全入時代の今、「学歴」より「スキル」の方が市場で評価されやすくなっているという逆転現象は、日本でも静かに始まっている。
では、これからの「人間教育」に何が必要か。
ここで私が思うのは、「生きる力は教室で育たない」ということだ。
勉強して資格を取れば安心、という時代は終わった。AIが情報処理をやり、ルーティンをやり、コードも書く時代に、知識の量で競争しても意味がない。
残るのは何か。
失敗から立ち直る力。自分で判断する力。他者と関係を築く力。身体で覚える技術。
剣道で大学に行った経験から言えば、道場で培ったものは「知識」ではなかった。繰り返しの敗北の中で育つ「粘り」と、仲間の存在から生まれる「責任感」だった。それは試験勉強では絶対に得られなかったと思う。
「行動力」と「経験」を意図的に設計することが、これからの教育の核心になる。失敗させること。本物の問題に向き合わせること。汗をかかせること。
大学進学率だけが上がり、実際の「社会への接続力」が育っていないとしたら、教育投資のリターンはどこへ行くのか。
それは個人の問題ではなく、社会設計の問題だ。
そして今、世界はその問いに、「ブルーカラーへの回帰」という形で一つの答えを出しつつあるのか?
でも私はもう一歩先を問いたい。ホワイトカラーかブルーカラーかという軸ではなく、「自分の手と頭と心を使って、誰かの役に立てるか」という軸で人を育てることが、次の時代の教育の本質ではないか。
大学を出ても「良い仕事」がないかもしれない時代。それは実は、「良い仕事とは何か」を問い直すチャンスでもある。
おわり。
参考ファクト(使用データの出典)
– 新卒大学生失業率5.8%・不完全雇用率41.2%:ニューヨーク連銀 / CS Monitor(2025年6月)
– コンピューターサイエンス卒失業率6.1%:Challenger, Gray & Christmas / FinalRoundAI
– 職業学校卒業生の失業率2.1% vs 大卒15.3%:BLS、Fortune誌(2025年11月)
– 職業校入学者16%増:National Student Clearinghouse(2022-2023)
– 2025年前半の雇用削減70万件・前年比80%増:Challenger, Gray & Christmas
– 日本職業高校の労働市場プレミアム:Ogawa(2025)Japanese Journal of Sociology
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★ウェルビーイング学会 ジャーナル創刊号『Journal of Wellbeing』に執筆者として掲載されました。
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