通所型サービスAの理想形とは【サービスに決まりや期限はない】

高松市の通所型サービスA(短時間型)の事例

「高松市は、通所A2カ所です。みなし指定と通所Aの両方が24カ所…」

これは一般社団法人キラメキ社会福祉事務所の上田さんからの情報。高松市へは昨年「脳イキイキセミナー」でお邪魔しました。その後も、通所型サービスAの事業所運営はじめ、イベントや出前講座など精力的な活動をされています。

こちらが上田さん。

介護予防・日常生活支援総合事業(以下:総合事業)では、「少なくとも30年度にはこれこれこういう事をして下さいね、やり方はお任せするから」と、自治体が課されていることはたくさんあります。それに対して、新しいことにいち早くチャレンジという雰囲気ではなく、「足踏み状態」のところは多いものです。計画ありきですが、実践が回りだすのはまだこれから。
以前は「うちの地域では総合事業は始まってはいるものの、これまで通りだから今のところ危機感はない」という介護関係者の声も聞いたことがあります。しかしながらダブル改定を目前にそうもいっていられない、状況は徐々に変わってきています。

上田さんのところ(脳若トレーニングキラメキデイ)では緩和基準型(短時間型)通所サービスを展開されており、社会福祉士としてのスキルも生かしながら、多様な専門性あるスタッフと共に通所型サービスを展開されています。

自治体により表現や条件が変わってきますが、高松市においての通所型サービスA(緩和型)は、

1回 3325円(328単位)
※事業対象者は要支援1(月5回まで)要支援2(月10回まで)

国は、事業対象者は地域包括支援センターで「基本チェックリスト」により生活機能の低下の有無を確認し、「低下が見られる」と判断された場合、サービスの申し込みを行うことができる、としています。それでも、ケアマネ、介護認定審査会、ドクターの意見書、包括支援センター・・・ルートは複雑で様々、道筋がよくついていない為、結果的にこのサービスを「知らない」人がまだまだ多いというのが現状です。

パンフレットはこちら

大阪市の通所型サービスA(選択型)の事例

こちらは大阪市西淀川区の『脳若サロン 和んすもあー』さんです。代表の木村さんが脳若トレーニングを、管理栄養士の奥様が栄養改善。さらに看護師や柔道整復師による運動器の機能向上をメニューとして質の高いサービスを展開する、選択型通所サービスです。

チラシはあえて手書きで親しみやすく!

通いの場を盛り上げていくには地域の協力が必須。地域サロンなどに出向いて介護リスクのある方などにお声かけし、なるべく元気で一日でも自宅で生活できるよう支援しよう、というもの。

選択型通所サービス(大阪市)
1回 4330円(プログラムごと)

残念なのはこのサービスを受けられるのは一生のうち一回だそうで、今後100歳まで元気に生きるというこのご時世でそれはないよな、と・・・・本当に自治体によって決まりは様々です。ちなみに、上記高松市は事業対象者については更新は不要で期限は設けていません

木村さんは介護保険適応と、卒業された方や年齢に関係なく誰でも利用できる保険外事業での受け皿を準備されています。

総合事業って?良いの悪いの?

良いの?
・軽度の方でも総合事業を利用することで、介護予防に取り組める
・要介護認定で「非該当(自立)」と判定された人もサービスを利用
・基本チェックリストを使って素早くサービスを利用
・そのサービスも多種多様。
・この施策によって2025年を乗り越えられる…
・医療と介護、そして住民主体の生活支援の部分がうまく連携できる…

悪いの?
・全国均一サービス(料金)から自治体の裁量に任せる為、地域差が生じる
・ボランティアが訪問介護や通所介護を担えるの?
・色んな意味で専門職との差は何か?という疑問
・住民主体でなんでもやれというのは無理!という批判

良いとか悪いとかが論点ではないのですが、「良いも悪いも今まで通りでは破綻するから自分たちで考えようよ!」ということかな。
一番大事なのはいかに「通いの場」を活発化できるか?だろうと思います。自宅の次に「居心地の良い場所」とは一体どんなところなのか?居心地の良い場所であり、かつ、自分の将来の為に必要だと認識できれば、私費でもそこへ行きたいはず。(経済的に余裕があればだが、予防に関しては優先順位が低め→この啓蒙が必要)

さらに、健康寿命を延ばすために正しく真摯にやっている事業所がまだまだ認知(理解)されていないというのが一番の問題であると感じるところです。

以前、「脳若トレーニング」で地元メディアに紹介された時、問合せの電話が殺到したことがありました。その声の中で一番多かったのは「自分はまだ、介護施設ではないところへ行きたいんだ」という声でした。

介護予防の業界に多業種が参入することについては賛否両論あろうかと思います。かく言う私も医療・介護の専門でもなんでもない。でも、予防に関してはより優れたサービスが選ばれる、これは正しい事だと思っています。

通所型サービスの理想形は?

私が「脳イキイキセミナー」などの講演で最後に訴えている言葉に、「長生きするなら世の中の為に自分の能力を少しでもいいから還元してくれ」というメッセージです。私が高松市の上田さんにお願いしたのは、「お元気シニアさんからサポーターを育ててほしい」という提案です。キラメキ社会福祉事務所では通所Aサービスだけでなく、出前講座や委託講座、セミナーやイベント開催で啓もう活動合わせ精力的に動いているなか、「脳若サポーター」の育成講座も開催していらっしゃいます。
このサポータ養成の仕組みは当社が現在福岡県の市町村で実績をあげてきたノウハウをそっくりそのまま使ってもらっています。スライドやテキストも提供し、予防のために「脳若トレーニング」に通ってくださる方へお声かけし、介護予防の大切さや認知症への理解(特にMCI)さらにサクセスフルエイジングやレジリエンスを学びます。特にコミュニケーションについては脳若トレーニングの中の教材も使いながら、深く考えていきます。最後は自分と地域の10年間をはっきりとイメージしていただくという作業を行います。「自分ごと」に落とし込むんですね。

現在・将来の地域の状況を可視化し、自分の未来もイメージしながら「出来る人が出来ることをやる」という内容。様々な方面から座学として学び、最後は「自分ごと」に落とし込む。

サポータになった方は少しのお手伝いが必要な脳若トレーニングの講座でサポータに回ってもらうという仕組みです。(福岡県の自治体ではこれを生活支援のボランティアの仕組み作りとして採用されています)

ポイントは、ここに「通いの場」ができていて、元気な方は自ら学び、ボランティア(有料ボランティアも)に参加することで自らの介護予防に繋げるという総合事業の本来の目的に合致している形を実践するということです。
上田さんの脳若ステーションではこの形が出来たので、包括支援センターなどには活動報告を定期的に行っていく予定です。

今後は、コミュニケーションを学びたい子供や学生を巻き込む事は当然想定内。
アクティブシニア、障害を持った方、認知症の方でも住みやすい地域作りをという観点で「通いの場」を作っていくのが理想です。
国は「最終的には住民主体で全部やってね」(通所サービスB)を理想としていると思いますが、それは仕組みがないと難しいことです。一つずつ積み上げていくことが大切で、

今、手探りでも実践するかしないかでは、10年、20年で天と地の差が生まれてくると思うのです。

土台つくりは大変なこと。今回事例としてあげたお二方も様々な工夫をしながら選ばれるサービス作りに日々邁進していらっしゃいます。

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